泣くロミオと怒るジュリエット観劇日誌2/8②

 

前回は役者さんの中の人の話を中心に書きました。ようやく本筋に触れたものを書けます←
 
 
 
 【東京公演】
2020年2月8日(土)~3月4日(水)
Bunkamuraシアターコクーン
 
作・演出:鄭義信
美術:池田ともゆき 照明:増田隆芳 音楽:久米大作
音響:藤田赤目 衣裳:半田悦子 ヘアメイク:宮内宏明
擬闘:栗原直樹 振付:広崎うらん 歌唱指導:大塚茜
演出助手:松倉良子 舞台監督:榎太郎、大刀佑介
 
出演:
桐山照史(ロミオ)
柄本時生(ジュリエット)
段田安則白頭山東洋医療所・ローレンス)
八嶋智人(ティボルトの内縁の妻・ソフィア)
橋本淳(ベンヴォーリオ)
元木聖也(マキューシオ/墓掘り2)
高橋努(ジュリエットの兄・ティボルト/墓掘り1)
岡田義徳(若頭・ロベルト/傷痍軍人
福田転球(警部補・カラス)
みのすけ(巡査・スズメ/傷痍軍人
朴勝哲(傷痍軍人
水谷悟(キャピレット愚連隊/客/娼婦/ほか)
西村聡(同上)
鈴木幸二(同上)
ワタナベケイスケ(同上)
白石惇也(同上)
岩男海史(モンタギュー愚連隊/娼婦ほか)
砂原一輝(同上)
ふじおあつや(同上)
平岡亮(同上)
宗綱弟(同上)
 
 

 
 
 
もっと明るいテイストのロミジュリになるんかなぁと思ってたんですよ勝手に。蓋開けてみたら原作まんまの激重ロミジュリでびっくりしたっていうのが本音。他担の友達2人にチケット譲って観劇してもらう予定なんだけど「絶対面白いから!」って言った私の気持よぉ。いや面白いんだけど。超面白いんだけどfunnyのほうじゃなくてinterestingのほう、興味関心を起こさせる意味での面白さなんだな…funnyも勿論めっちゃあるけど。新喜劇かよって何回も思ったし、何回も手叩いて笑ってしまって漫才観に行ってんじゃないのにってセルフ突っ込みいれたけど。
 
これ戦争・戦後の知識浅い人とか、中高生ついていけるんかなって少し不安になった


 
 
 
そんな心配を超越するくらいめちゃくちゃ良質な作品なのは間違いない。はず。
演劇知識ない人間が何を言うって話なんですけどw
 
 
 
 
正直言ってしまうと、誰にも感情移入できなくて、申し訳ないくらいに泣けなかったんです。涙ぐんだところもあったんだけど、隣の子のズビズビ具合・後方から聞こえてくる大号泣の音・壇上のロミオくんの泣き具合と比べたら私の涙なんて粉塵同然。もう少し離れたところから観れたらまた変わるのかなぁ。泣きたいなぁ。
 
 
 
そんな私だけど、照史くんの演技どうこう抜きにして「すごく綺麗なロミジュリを見せてもらった」と素直に思えて、それって照史くんがインタビューで言っていたそのものだったんですよね。
 
 
 
 
 
ラストシーン、観劇してる人しか読んでないものとして言ってしまうけど、現世では仲間たちが血祭りになっている中、血が地面だけでなく空間にも舞っている中のあの赤と、ロミオとジュリエットの純白衣装の対比、何も分からないまま周りが死んでいったのを追悼するしかないソフィア&少なからず自分が間接的に手を下した友人(想い人)とその想い人に親友を殺られたマキューシオの黒の対比。文字で書き起こしただけでもカオス。壇上で見ると、背景の黒・墓場に広がるユリ(?)の白・ロミジュリ&マキュティボの白・下手側の異質な黒・前面に広がる赤。カオスだし狂気なんだけど、真ん中で幸せにしている来世の(あえて来世と書くけど)ロミジュリが綺麗すぎて、鳥肌ものだった。間違いなく綺麗な純愛ものロミジュリだった。付随する情報量がめちゃめちゃ多いけど、ちゃんとロミオとジュリエット。悲劇だよ。一歩間違えたら最後まで喜劇で何を見せられているんだ状態になりかねないものをよくぞここまで魅せてくださいました、です、
 
 
 
 
気になったことをポツポツと。
 
 
 
ロミオとジュリエットの関係性
作中、何回も「ロミオのアホ」って頭抱えてしまうシーンがあったんだけど、その中でも一番は、ジュリエットが死んだってベンヴォーリオに聞かされた時、性愛のことを熱く語り始めたことでした。*1  そこは「僕の明日への希望がいなくなっただなんてそんな」って自我崩壊してほしかった。
 
 
お前さんが好きになったのは女の身体であって誰でもよかったんかーい!って突っ込みたくなる。違うのは分かってるけど、その先にあった行為なのは分かっているけれど、それでもそこで愛おしそうにヤった話をするんじゃないよ…ベンの気持ちをマキュの気持ちを考えry
 
 
それに対して、ロミオが死んだってわかったときのジュリエットは、「ロミオと一緒に○○したい」ことしか浮かんでこないって言う。この差が辛かった。性愛を語る男vs貴方じゃなきゃダメと縋る女………
ジュリエット仮死中の“ロミオによるロミジュリのための結婚式*2 ”、あのシーンがなかったら大真面目にロミオのこと張り倒してしまう気がする。ロミオにとっての愛って何なの~~~~~~
 
 
そもそも2人が好き合うきっかけも若干温度差があるというか、よくよく考えると、「ん?」って。ロミオは、ジュリエットの「明日を信じる・希望はある・希望がないと思うのはすぐそばにある希望に気が付けないから(ざっくり)」って言葉に惹かれる(救われる)。でもそれって“ジュリエットママ”が言った言葉をジュリエットが思い出して伝えているだけであって?ジュリエット自身の魅力ではないのかもしれなくない??(あの言葉を忘れずにいたというだけでも彼女の魅力になるのかもしれないけども)
 
吃音を気にすることを馬鹿みたいって言ってもらえたことに射抜かれたのかなあ。
でもその吃音を昔から認めてずっと仲良くしてきた仲間が……好いてくれていたベンヴォーリオがおるやんかあ(大泣き)
 
 
ジュリエットもジュリエットで、これだからロミオが好き!っていう決定打が分からなかった。
ジュリエットが惚れっぽいから?→押しに弱い?
ロミオがイケメンだから?→原作では美男美女で一目惚れしてって話だけど、ジュリエットがブス扱いされてるのでこの説は薄いかなあ…
惚れっぽい、ただそこに帰結してしまうのだとしたら余りにも弱すぎる気がするので、「ロミオが自分を必要としてくれた」ことが嬉しかったのかなあと思ったりもする。
だとしてもそれで仮死GOできるのがすごいんだけど。愛なのか、衝動なのか。
 
 
 
●監督がこの作品を通して伝えたかったこと
誰が見ても分かるように、
戦後の日本々vs韓国、vsじゃないか 日本と韓国、帰れなかった韓国人の生き様。
ローレンス先生の最期のセリフにあるように「憎しみは何も生まない」こと。
 
プラス
ロミオ単独結婚式の話に戻り「僕たちのこと、誰も祝福してくれなかったね」 「男と男 女と女 人種が違ったって、どんな愛だとしても祝福されないといけない」これかなあ。
 
 
観劇中、ベンヴォーリオがどうして裏切る行為をするのか全然分かんなかったんですよ。なんでそうなるのー?!って、親友が死んだ日に彼女に会いに行ってゴニョゴニョして腹が立ったのは分かるけど そこまでする?毒薬自分で渡す?って
で、よくよく考えたら、あ、そうかベンヴォーリオってロミオのこと好きだったのかと。
 
「見てるだけで幸せ」ああああああああああああ←崩壊
そのことを重ね合わせると、あの墓場結婚式で、なぜ同性同士の恋愛も祝福されなければならないってわざわざ言及したのか見えてきました。あの時代にあの言葉が出てくるのは時代錯誤じゃないかって観劇中涙が引っ込んだ時間を返してくれ(?)
 
ロミオさん、貴方を思っていた人は長年近くにいてくれたんだよ…ベンヴォーリオが切なすぎる。突然現れた女にひょっこり持っていかれるの辛いね。しかもかわいいって思えない女の子だと余計にだね。でもブスいじりは良くないと思うぞ。*3
 
この話、ベンヴォーリオ視点で観たら悲しすぎる。それを踏まえたラストシーンは無理としか。あ゛ーーーーー
 
 
 
 
●ロミオは金持ちなのか
原作は裕福な家庭同士の敵対構造だけど、今回はあくまでも日本のチンピラvs三国人。愚連隊の生き残りロミオ・ベンヴォーリオ・マキューシオ。いくらロミオが屋台で稼いでいるからって、ベンヴォーリオとマキューシオを養っていくほどのお金にはならないと思うんです。だって商売やってる場所が、灰色に染まって明日が見えない街ヴェローナだから!お金持ってる人ほとんどいないでしょ!ローレンス先生が食べてくれるからとは言え感。
ベンヴォーリオの「頼れるのはロミオしかいない」発言が謎すぎた。他にお金出してくれる人はいないとは思うけど彼も裕福じゃない(ていうか服装からするとロミオが一番金持ってない)、そんな彼に借金頼めてそのお金でパーっと騒ごうぜー!ってマキューシオ言えたよね。苦手〜〜率直に言うと苦手だ〜〜。憎めないんだけど。実際いたら苦手だろうなと思う。
 
 
●ローレンス先生も金持ちじゃない?
対ベンヴォーリオだったかな?そんなに余裕無いって言ってた気がする。だとしたらやっぱりロミオもほとんど余裕なんてなくない?大事な友達だからって貯金も全部崩してそうロミオ(´pωq`)ロミオの味方になってしまう(´pωq`)
 
 
●ローレンス先生、なぜなぜ?
序盤、ロミオに「ベンマキュみたいな奴らとつるむな」と言っておきながら、荷物持ってロミオを駅まで送ってあげてくれとか、お手紙渡すこととか、大事なこと全部ベンヴォーリオに何の疑いもなくお願いしてしまうこと。3人の友情を認めていたから?としても疑わなすぎない? 本物の毒薬が無くなっていることに気がつかなかったのも不思議。普段から持ち歩いてる理由も謎。死にたかったの?
 
 
●ティボルトの死
ロミオが刺したことになってるけど、どう見てもティボルト自身がロミオの腕を掴んで自分から刺されに行ってました。なぜそこに輩は触れないのか。自殺だよあんなの。ロミオが着せられたのは濡衣じゃ。動転してて気がつけてないロミオが可哀想すぎる。
 
 
●マキューシオの死
その直前、ティボルトがマキューシオを殺した話。ティボルトが三国人のちびっこを殺してしまったPTSDに駆られてきたのは分かるけど、申し訳ないみたいな気持ちがあるなら、あんな分かりやすいマキューシオの挑発に乗ることないし、刺すことない。刺したら死ぬって分かるでしょ。ティボルト何かクスリ(的なもの)やってたのかなあ、酔ってたから?幻影とか見えてたのかな。それとも三国人を見るだけで当時の記憶が蘇るから片っ端から消していきたかったのか。戦争のせいなのは分かるけど捻くれすぎてしまったティボルトを見るのが辛かった。
 
 
●ティボルトはソフィアのことを愛していたのか問題
ソフィアがめちゃくちゃティボルトのことを想っていたのは分かるけど、ティボルトはソフィアのこと愛していたのかなあ。その描写が無かった気がする。戦争前は想いあっていたのかもだけど、戦後のティボルトにはそんな余裕も無さそう…ソフィアの愛が届かない様も見るのが辛かった。
 
 
●カラスとスズメ
最期。2人の心変わりが読めなかった。物語全体に目を広げたら見えてくるものもあると思うから、そこにも気をつけて今後観たいなと思う。
 
 
 
 
ツラツラ書き殴ってみたけどこんな感じかなあ。個人的には言語化するのが難しい舞台で、ようやくここまで描き起こせた感じ。これから2回目観てきます。

*1:アイドル的には完全OUTのセリフですよね 南無南無

*2:あの場を1人で持たせる桐山照史さんの実力(大泣き)みたいな気持ちになる

*3:WESTivalの濵子いじりとか、WESTVの乙女座いじりにつながるとこある、良くない。ってわりと女性観客は思ってると思うんだけどね、そういう見た目判断てきなのって男性からのほうがやはり大きいのか…ってジェンダー論が始まるのでこれくらいにしとく