「サラ・ベルナールの世界展」に行ってきた件

フランスの大女優、「サラ・ベルナール」の生き様を題材とした舞台作品、「ライオンのあとで」。舞台に通った〆として、この展示を観に行けたのは本当に幸運だったと思います。

舞台の感想はまだきちんと書けていないけど、この展示を見て知ったことや感じたことを 先に書き残しておきます。展示内容のネタバレになってしまうので、これから観に行く予定がある方はご注意を。あと、舞台内容と史実とがごっちゃ混ぜになってる話になるのでその辺りもご容赦ください。

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◯まず。
サラ・ベルナールさんって真面目に実在したんっすね!(そこ)

当たり前かもだけど、展示会の7割方の展示物が、サラに関するものなんですよ。日本史とか世界史に出てくる偉人の皆様のお写真もしくは肖像画ですら、1枚あれば良い方じゃん。かの織田信長とか豊臣秀吉とかだって、本当に本人かも分からない絵が一つあるだけじゃん。

それなのに!
サラをモチーフにした絵とか!日常の写真とか!演劇中のお写真とかもあるし!グッズもあるし!お芝居の台本とか!これ何に使うの?っていうスーツケースサイズの金属製の何か(にサラが描かれてる)とか!

もーね、どこ見てもサラなんだわ。*1 言うなれば、100年ちょっと前に生きてたサラのオタクしてた方の部屋を覗いている感覚?(例え方よ)

そしてどれを見てもお美しいんです。
友人宛に 本人の姿を描いてもらった絵とか、ご逝去されて横たわってる姿の写真とかまで展示されていて。確かに年を重ねられているのは見て取れるのだけど、生き生きとしてるというか*2、人間として輝いてらっしゃるの。


舞台に立つときに使っていたというステッキ(既製品ではなくて、デザインからオーダーしたらしい)とか、実際に使ってた銀製のカトラリーとか、サラの顔が描かれた絵皿とか、
サラのドレスとか(意外と小さい)
舞台衣装のベルトとか(細すぎ)
舞台衣装の冠とか(この冠にお顔立ちが負けないってすごいわ)

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https://bijutsutecho.com/exhibitions/2646

その冠にもベルトにも、宝石がたくさん施されていて、ハ〜〜〜〜豪華絢爛〜〜〜〜〜〜公演に金かけてる〜〜〜〜〜〜感!!!!(言い方)
サラの人気度を、それだけでも身を以て感じました。だって元取れるってことだもんネ。

 

 

◯そんなサラ"オタク"な空間にお邪魔した気分になった展示会。舞台「ライオンのあとで」に登場した単語に纏わる展示もありました。

◯1番ショックだったのは、劇中でサラが「あれだけは手放さない」と大切にしていた「ベル・イル島」(ベリール島だと思ってたのはここだけの話)の別荘は、第二次世界大戦中のユダヤ人迫害に伴って破壊されたということ。いまは廃墟として残っているらしい。修復されてるのかな、サラの博物館として営業してるとかしてないとか…

宝石よりも大切にしていた別荘(´pωq`)
ヒトラーめ(´pωq`)
対人間だけじゃなく、サラのようなユダヤ人で活躍していた人(迫害の時期には亡くなっていたハズ)が遺した建物にすら爆破するなんて、、惨い歴史。

でも、ユダヤ人は有能というか、才能の発揮の仕方が上手いというか、自分を前に出していけるタイプっていうの?サラもそういったタイプのお一人だったんだな〜って思う。ユダヤ人の女性って強い(個人的なイメージの話)。

晩年、その別荘の庭で、パーティーのようなものを催している写真が展示されていました。サラはベッドに腰掛けていて、切断後の右脚を隠すようにブランケットをかけていて。
ベルイル島って、アクセスがあまり良くなくて行くのに相当な労力がいるところみたいなんだけど、左脚一本だとしても周りの人に助けてもらいながら 多くのお偉い方を呼んで お話をしてリフレッシュして 仕事に打ち込んで、、、
彼女の人生、相当濃かったんだろうなと思います。


◯逆の意味で衝撃だったのは、サラの公演で販売されていたグッズと思われる品。正確に言うとグッズとは書いてなかった気がするんだけど、サラの商業的な力を紹介するコーナーに展示されていたから、恐らくそういうことだろうと解釈しました。
サラが演じた役の姿が描かれたポストカードがあって、それらを10種類集めると大きなサラが出来上がるっていう。

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いまのおたくがよく利用されてる
コンプリート欲をくすぐるやつやん!
サラさん上手いっすね/(^o^)\

他にも、自分がお菓子の広告塔になったりとか 当時女優さんがCMちっくなことするなんてーみたいなこともしてたみたい。

 

◯それもこれも、息子のモーリスが賭博ばっかりしてて借金まみれで、お金稼がないといけなかったからと紹介されていました。劇中でも、サラを金ヅルのように扱ってましたよね。サラさんもお金ない現実に目を背けながら「お金送ってやって」なんて言ってましたけども。
サラはサラで、息子がぐうたらになってしまったことに責任感じてたのかなあ、、。自分が有名だから、息子が色々と大変な思いをしてダメになったとか。厳しく躾けなくてとか。分からんけど。

とにかくお金が必要だったことは間違いないようで、アメリカ巡業を13回やったとか確か書いてありました。13回って(*_*)

それと合わせて、自分の劇場を作っちゃったりしてたんですね。すご。座席数4000席とか書いてあった。ライオンのあとでの上演があったEXシアターのキャパが座席ありのとき920席?とかなので、いかほどの集客を見込んでいたのか……

ミュシャが描いたポスターもたくさん展示してありました。めっちゃ大きい!想像の大きさを超えていて、人1人分以上の大きさだったんじゃないかな…縦の長さは2mある?くらいの迫力でした。フランス語のポスターもだけど、英語でタイトルやら諸々が描かれたポスターも当然のように置いてあって、アメリカ(英語圏)で興行してたのって事実なんだなぁって証拠を突きつけられた気持ちになったり(語彙力)

 

◯劇中のように、アメリカでのサーカス出演が本当にあったのかどうか 情報に行き着くことはできなかったのだけど 。もちろんお金も必要としていたんだろうけど、亡くなった時期も映画の撮影期間中だったそうで、最期まで女優として生きた方なんだなと改めて。

サラを演じた黒柳徹子さんも、21年前にこの役に出会って、(その前からサラのことをご存知だったとは思うんだけど)より強く、人生現役!いつまでも芝居するわよ!って影響を受けられたのかな〜。

 

◯右脚の切断手術のこと、劇中では「トスカという舞台で怪我をして、どんどん痛みが増して…」と深いところまで突っ込まれていなかったけれど、展示には「右膝壊疽」って書いてありました。劇中で"デヌーセ少佐は切断手術は何回もやってきた、壊疽のせいで切った人もいた"・"サラの場合は年齢が問題な部分もある"と描写があったけれど、サラ自身が壊疽状態かどうかは触れられていなくて。
展示会帰りに調べたんだけど(遅い)、サラって随分と結核と付き合っていたようで。膝も、骨結核によって壊疽状態になったみたいです。

劇中で触れていないだけで、サラの膝は壊疽状態だった設定だったんだろうけど、改めて考えると、デヌーセ的には「戦争によって傷つけられて、切らざるを得ない脚の切断はした。でも、戦争に関係ない場所で、(壊疽状態になっているとは言え(その時点では怪我の原因を知らなかったし))自分がめちゃくちゃお慕いしているサラ様の脚を切ることなんて到底できない」って心理になるのも容易に理解できました。そりゃ無理だわ。
でもってその肺結核になった原因が、舞台女優としての怪我だったなんて知ったら、仕方ない切りましょうって決断もでき………たんだろうな。デヌーセさんしか分からない部分ですけども。

 

◯舞台中で触れられていなかったもう一つのこととして、彫刻家としてのサラの一面の展示がありました。サラの作品が実際に展示してあって、雷を撃たれた気持ちになったのがこの作品。

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https://www.mfa.org/collections/object/fantastic-inkwell-self-portrait-as-a-sphinx-54054
羽ペンを刺しておく壺。サラの自画像ということになっています。原題はFantastic Inkwell (Self-Portrait as a Sphinx)
スフィンクスとしての自画像。

サラって猪突猛進な部分もあるし、豪快だし自分勝手な部分もあるけれど、自分自身の分析含め、客観的に物事を見ることに長けている人だったんだろうなと思っていて。
そんな彼女が、自分自身を「神聖な生き物・怪物」と例えられるスフィンクスに例えたこと。男尊女卑が強かったであろう時代に、「ハムレット」を始めとして男役を演じたり、先述の通り 自分自身でのプロデュースがとても上手だったり。美しい女優かつ、能力的 精神的 知名度的な面でも強い力を持つことを、このような形として 自分で 示せるなんて、簡単な言葉になってしまうけれど 自己肯定感も含めてどれだけ凄い人だったんだろうと 言葉を飲むことしかできませんでした。

 

◯まとまらないけれども、最後に
美術館や展示会で「ちょーー面白い!」って思ったことがない私だったけど(日本史派で西洋史に疎いせいもある)、舞台を通してサラという人物を知り、スポットをほぼサラに当てたような展示会に足を運んで、更に「むちゃくちゃ面白かったから、ライオンのあとで観に行った人みんな行ったほうが良いよ」なんて勧めたくなる程に、ほんっと興味深い展示でした。劇場に併設しておいてほしかったくらい。物語への理解も深まって(なんて偉そうに聞こえてしまうけれど)、美術展とかって こんなに楽しく観れるんだー!!って気付けたことも個人的には嬉しいポイントでした。


劇中、「夢を魅せる⇔現実を生きる」対比や、良い意味でケロっとしていて変わり身が早いこと、人情に厚いこと等々 表されていて、その点の実際はどうだったんだろ〜なんて思っていたのだけど
こんなサイトを見つけて

 

脊髄反射の愛され大怪物、女優サラ・ベルナール【悪姫5】 https://www.cosmopolitan.com/jp/entertainment/series/a6120/woman-history-sarah-bernard/

 

この筆者が言う通りなら*4、私があの舞台から感じ取ったサラの人間性って間違ってなかったんだなと。やりたい放題だけど、人としてどうなの?!ということは無かった。だからこそ周りから毛嫌いされたり芸能界から消えたりもなく、国葬までされるような大女優としての人生を全うできたんだろうな〜〜って思います。

生誕100年・150年って記念切手が発行された実物が飾られていたり、ラジオ局で特集が組まれたり(そのときのポスターがありました)と、死後も忘れ去られない人物。
生きているフィールドが全く違う彼女から、自分の信念を貫いて生きることのカッコよさ、強さ、を学ぶ機会を得たこと、これからも大切にしていきたいと思います。

*1:サラ関係ないミュシャの作品とかアールヌーボーの作品とかも勿論あります

*2:お亡くなりになった姿に生き生きってどうなの

*3:ごめんなさい公式な出展が見当たらなかった;;

*4:原文に当たれないので、こんな書き方になってしまいます、ごめんなさい